お知らせ
2020年5月11日
夏はじまる
ゴールデンウイークも本格的に開けました。まだまだ外出自粛は続きますが、
外はすっかり初夏の陽気!
この時期に口ずさみたいのは、なんといってもこの一句です。
艸(くさ)といふ艸を愛でゐて夏はじまる 山本 潔
夏のはじめは、空も、風も、空気も爽快。
まさにこの句のように、歩くたび、草木花に声をかけたくなります。
ちなみに、「艸」は草の本字ですね。
著者の山本潔さんは、今年1月に新俳誌「艸(そう)」を創刊し、
3月に同じ名の第一句集『艸』を刊行。
二つの「艸」を掲げて、新しいスタートを歩み出されました。
掲句をはじめ潔俳句は、読む人の心にそっと寄り添ってくれるような安心感があり、
時に懐かしい。
秋風や何も映さぬ鏡石
麻衣ひと日の皺を増やしたる
福耳と言はれて餅を切る役目
一集を通して、どの句も 潔さんの内面から滲み出たもので、
ああ、俳句の言葉はその「人」を通して生まれるものだなぁ、と改めて気づかされます。
そんな潔さんから先日、お手紙とともに掲句と署名入りの本が贈られてきました。
その後ろ見返しには、
花咲くや句集に栞忍ばせて きよし
なんと、ムスメと私の名をダブルで詠みこんだ句が!!
こうした挨拶句をサラッと詠まれる潔さんだから、
あの大木あまりさんも心を動かされたのですね(笑)。
詳しくは、『艸』の序文に記されていますが、
東京大学の五月祭へ吟行に出かけたある日、
キャンパスで仲間とはぐれてしまったあまりさんを見つけ出した潔さん。
その日の句会で、
聖五月迷子の大木あまりやーい
と詠み、一瞬であまりさんの心を摑んでしまったのでした。
こんなウイットに富んだ句を即吟で詠む潔さんて凄いと思った。「迷子の大木あまりやーい」という呼びかけに、作者の思いやりと優しさが伝わってきた。草原にいるわけでもないのに、「草の海からエール」をもらったような不思議な感覚にとらわれた。唐突に思われるかもしれないが、「迷子の大木あまりやーい」こそ私への応援句だと思ったのである。
(大木あまり序「海の草からエールを」より)
この句、「聖五月」なのでまさに今頃の時期でしょうか。
それにしても「聖五月」って、いい響き。
生命力あふれる初夏に、閉じこもってばかりじゃつまらないーーー!
せめて草を愛でる気持ちは忘れずに一日を過ごしたい。