朔の本
佐藤のびる句集『柚子坊』
発行:2020年4月1日
装丁:吉田 瞳
四六判ソフトカバー 172頁
非売品
かつて師の蓬田紀枝子は、著者の俳句をこう評した。「写生に徹した日常詠にその本領あり」と。
大らかな自然詠も加わり深まりを見せる「駒草」同人の第二句集。
◆「駒草」2020年8月号より
のびる作品は重いものを詠んで季語が静かに存在感を持っている。季語は明るいのだが、「深い」と形容したくなる明るさ。先に述べた軽くて楽しい詠い方こそ、これらの結晶化を生んでいるのかもしれない。 (浅川芳直)
◆作品12句抄
谷川の初蝶空へ消えゆけり
蔵王より日矢届きたる藁野積(ぼっち)
花曇り解体重機響きけり
柚子坊の音立て葉つぱ食べ尽くす
日盛りや十九の長子眠る墓
田水張り栗駒山の影ゆがめたり
妻を呼ぶ声かすれたる夜の秋
咲き初めの萩映したる紀枝子句碑
母の忌や厨で刻む蕗の薹
いつもの木いつも来てゐる揚羽蝶
掻き分けて花なき茗荷摘みにけり
蜜柑熟れ朝日大きく昇りけり
<著者略歴>
佐藤のびる (本名 佐藤 伸)
昭和10年、岩手県一関市生まれ。
平成10年、「駒草」蓬田紀枝子主宰に入門、引き続き西山睦主宰に師事。
平成20年、第一句集「一本桜」上梓。
平成20年、宮城県俳句協会会員。
現在、「駒草」 同人、俳人協会会員。