朔の本

中川純一句集『雪道の交叉』

発行:2024年1月15日
帯文:行方克巳
装丁:奥村靫正・星野絢香/TSTJ
四六判ソフトカバー 256頁
定価:2750円(税込)
ISBN:978-4-911090-02-2 C0092


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富安風生、清崎敏郎に俳句を学び、現在「知音」副代表として活躍する著者の、23年ぶりとなる待望の第二句集。科学者として農芸化学、微生物学を専門とし、生命・食・環境に対する深い洞察、優しい眼差しから、俳句の時空が広がる一集。

◆帯より

小鳥来るその木の幸のあるごとく

 とある一樹を目指して飛んで来る小鳥たち――。まるでその木には彼らだけが知る幸が備わっているかのようである。人生のまことの幸せとは何かを深く考える齢に作者はいまさしかかっている。しかし、一方では、人類の滅亡の危機を梟に問わなければならぬような時代にも直面しているのだ。俳人として、科学者としての作者の今後に注目する所以である。(行方克巳


◆自選12句

破蓮進化の果といふことを
山眠る見えざる水の奏でゐて
初絵筆頬ふつくらと描き入れし
雪道の交叉は若きらの交叉
猫の仔の貌ひつつりて鳴きにけり
ミニチュアの江戸の娘も夕涼み
嬉しさの不眠もありて明易し
木犀の香る七曜はじまりぬ
流れ星消えて危ふき星にわれ
月光にまみれ遡上の背鰭跳ね
梟に聞く人類の絶滅を
踏み当てし落葉隠れの根瘤かな


◆あとがきより

キャンパスが雪に埋まると、講義棟をつなぐ細い雪道が縦と横に掘りおこされる。始業時や授業の合間に若者たちが雪道を行き来して交叉するのを二階の窓から見ていると、彼等が自分の道を探しながら学び、友情を育んで人間として成長しているのが見えて、自然と希望が湧いてきたのであった。北国で学生たちと交叉しながら過ごした十一年間は、私にとって特別な意味を持つと考えて、句集名を「雪道の交叉」とした。(中川純一)     


<著者略歴>
中川純一(なかがわじゅんいち)
1952 年、東京生まれ。高校の担任だった清崎敏郎に師事して俳句を始め「若葉」入会、若手句会「青胡桃会」で富安風生から直接添削指導を受ける。
1984 年から13 年間、研究のためスイスへ留学。この間、俳句を中断。
1997 年、帰国。「知音」に入会し、行方克巳、西村和子両代表の選を受ける。
大正製薬研究所を経て、2008 年から11 年間、北海道網走市の東京農業大学オホーツクキャンパスに勤務。微生物学を教えながら学生たちとも俳句会をもった。
2019 年、定年退職で東京に戻り、「知音」副代表、現在に至る。
句集に『月曜の霜』(2000 年 ふらんす堂刊)
東京農業大学生物産業学部名誉教授、俳人協会会員

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