朔の本

桑本螢生句集『海の響』

発行:2019年8月1日
帯文・序句:深見けん二
装丁:奥村靫正/TSTJ
四六判上製本(セミハード) 218頁
2860円(税込)
ISBN:978-4-908978-25-8 C0092


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波音が聞こえてきそうな一冊

句集名『海の響』は、

  私の耳は貝の殻 海の響きを懐かしむ

     (ジャン・コクトー「耳」/堀口大學訳詩集『月下の一群』)

に由来する。瀬戸内海の海辺の町に生まれ育った著者にとって、

「海の響」は幼い頃から常に身辺にあり、親しんできたもの。

本書は、第一句集『海の虹』に続く、8年ぶりの第二句集で、

平成22年から30年末までの378句を収録。

この間に、母親の看取りという悲しい出来事を経験する一方で、

ご子息の結婚や三人の孫の誕生に恵まれた。

そうした身辺の出来事を、写生を通して季題に託してうたい上げる。

巻頭には、師・深見けん二氏による序句

  鎌倉に二人の師あり天の川

​が寄せられている。


◆帯文より 

  萩揺れて大本山は作務日和

 桑本螢生さんは、この第二句集『海の響』の時期に「湘南探勝会」を立ち上げ、『湘南探勝吟行案内』をまとめられた。鎌倉は螢生さんが大学時代の四年間、参禅に通った所であり、高浜虚子先生が住み、その墓が寿福寺にある。虚子先生は「深は新なり」といわれたが、本句集は、螢生さんが写生を通し、それを目指した成果といえる。

(深見けん二)


◆自選12句

膝ついて象の爪切る日永かな
木曾川と名を変へ蒼き雪解水
白雲をはなち残花の滝桜
野辺に母送る帰省となりしかな
色変へぬ松に雲ゆく御用邸
水脈しるく切る面舵や夕焼雲
瀬戸の凪ぎ銀河明りに島の影
相寄らず湾に二手の鴨の陣
蟻穴を出でて仏足石を這ふ
白南風や仮名美しき晶子歌碑
李白来よ牧水も来よ温め酒
海女舟に囲炉裏の熾のあかあかと


<著者略歴>
桑本螢生(くわもと けいせい)
昭和23年、大分県生まれ。勤務先の俳句部で深見けん二に師事し、平成11年、「花鳥来」に入会。現在、「花鳥来」会員・編集委員、「青林檎」同人、俳人協会会員。

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