朔の本
句集『トマトの花』書評・記事
句集『トマトの花』が毎日新聞「俳句のまなざし」(2021.11.2)で紹介されました。
評者は岩岡中正さんです。
成田一子『トマトの花』(朔出版)が詠むのは、弾けるような「今」であり「生」である。こちらは、連続する時間もしがらみも断ち切って、「天衣無縫」(高野ムツオ)で自由奔放。青春の危うさの一方で、恋愛、結婚、出産と、いのちの原初のエネルギーにあふれる句を詠む。俳句らしい手づかみの力と俳句をはみ出しかねないパワーは、みちのくの風土の力か。ただここにも、季語の力や「俳」が、しかと働いている。
青林檎齧り猿からやり直す
ゆつくりと卵にもどる日向ぼこ
あつけなく受胎してをりかき氷
シクラメン赤し沈黙おそろしき
灼け砂を来て太陽を口うつし
髪洗ふならツンドラの森の水