朔の本
藤田銀子句集『短篇の恋』
発行:2023年3月1日
序文:西村和子
帯文:行方克巳
アートディレクション:奥村靫正/TSTJ
デザイン:山田開生/TSTJ
四六判並製 204頁
定価:2420円(税込)
ISBN:978-4-908978-86-9 C0092
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十代の頃から詩文の創作を続けてきた著者。師の西村和子氏は〈蝶生る愛さるること疑はず〉の句を挙げ、「こうした本質に迫る句が詠めるのは、写生を怠らなかった証である」と評す。鋭い洞察力が詩にゆたかな発見をもたらす「知音」同人の第一句集。
◆帯より
AIが鐘撞く寺の蟻地獄
人工知能を駆使して鐘を撞かせるような時代性を十分認識しながら、一方では蟻地獄的存在を確信する『短篇の恋』には、硬質の抒情ともいえる歯切れのよいアイロニーが随処に見られる。
見えている現実と、見えない真実とを嗅ぎ分ける鋭敏さが銀子さんの身上ともいえるだろう。(行方克巳)
◆行方克巳選 10句
初仕事ペン一本の矜恃もて
正解の欲しき十代ソーダ水
浮輪積む店先掠め路線バス
待ち合はす終着駅の大西日
西鶴忌出合ひ頭といふ恋も
ヴェルレーヌ詩集背表紙秋の色
喧嘩売るやうにもの売る市師走
気の利いた嘘聞かせてよ春の宵
AIが鐘撞く寺の蟻地獄
うさんくさいもの輝かせ夜店の灯
◆あとがきより
表題「短篇の恋」は今回収録した句の文言からとった。壮大な長編小説は書けなかったがしかし、どんな長編にも劣らないだけの、言葉に対する恋慕は俳句でも示せるのだという自負を込めたつもりである。この思いが少しでも伝われば幸甚である。(藤田銀子)
<著者略歴>
藤田銀子(ふじた ぎんこ)
1964年 東京都生まれ
1988年 慶應義塾大学文学部哲学科倫理学専攻卒業
2008年 「知音」入会 行方克巳・西村和子両先生に師事
2015年 「知音」同人
2017年 知音「青炎賞」(新人賞)受賞
現在、俳人協会会員、「知音」編集同人