朔の本

『谷さやん句集』

発行:2022年11月1日
帯文・解説:坪内稔典
装丁:水戸部功
四六判仮フランス装 170ページ
定価:2200円(税込)
978-4-908978-80-7 C0092


直接小社にお申込みいただくか、お近くの書店、
またはAmazonでのご購入が可能です。
詳細はこちらへ

▸小社から購入 ▸Amazonで購入

首謀者は一体誰なのか―。この句集を手にすると、ふとそんな思いにとらわれる。ブルーのグラデーションが織りなす静謐な佇まいの一冊。開くと、鮮やかに切り取られた景色や場面や思いが、言葉となって生き生きと立っている。宗左近俳句大賞受賞作家による、待望の第二句集。

◆帯より

首謀者はこの捩花か透きとおる

首謀者とは悪事や陰謀を企てる人である。たいていの場合、それは悪い人なのだが、この句の首謀者には悪者のイメージがない。つまり、首謀者という語が辞書的な意味を超えている。これがこの句の第一番の魅力ではないだろうか。要するに捩花という素敵な首謀者を出現させたのだ。(坪内稔典


◆収録作品より

海の日の砂にイーゼル立てたきり
こんな日は秘書の菫を伴って
草踏んで四月は黙秘することに
行き暮れて日向夏まで戻りたい
ホッチキスごろつくさくらんぼの傍で
泳ぐとはずぶ濡れになる海を出る
花野では落馬のように抱かれたい
檸檬あり窓を開くに及ばない
冬青空小船に立っているかんじ
睡蓮の手前で電話をください
つわぶきも腰の工具も濡れている
雪にまだ早くて絵の具ころがして
屑みかん星に名前をつけましょう
棒アイス舐めて鴉を従えて
靴下を選る薔薇に水やるように選る


◆あとがきより

二〇二〇年六月に「船団」(坪内稔典代表)が完結し、散在した。読んで、詠んで、書かせてもらった二十六年間の会員生活が終わりを迎え、私たちに向けられた「ひとりになって考える」とは、どういうことなのか、とぼとぼと考えていた。ほぼ同時進行となったコロナ禍では、自ずと自然の中へ足が向いた。瀬戸内の島々を訪ねたのもこの頃からで、島はいつも平静で私と気持ちの合う仲間を迎えてくれた。ウクライナの半旗がたなびいていた小さな島もあった。(谷さやん


<著者略歴>
谷さやん(たに さやん)
1958年 愛媛県生まれ。
1996年 愛媛新聞「夏井いつきのカルチャー教室」より作句開始。「船団」入会、「藍生」入会。
2006年、第一句集『逢ひに行く』により宗左近俳句大賞受賞。坪内稔典・谷さやん共編『不器男百句』刊。
2011年 「藍生」退会。
2012年 『芝不器男への旅』刊。
2018年 俳句とエッセー『空にねる』刊。
2020年 「船団」散在。「窓と窓」常連となる。

ひとつ前のページへ戻る