朔の本
句集『すみれそよぐ』書評・記事
『すみれそよぐ』が東京新聞(2020.11.22)の「句の本」で紹介されました。
1983年松山市出身で昨年、桂信子賞を受賞した著者の第三句集。2012年夏~20年春の三百四十四句を収録した。〈すみれそよぐ生後0日目の寝息〉〈星空は無音の瀑布鯨飛ぶ〉
『すみれそよぐ』が毎日新聞(2020.11.30)の「俳句のまなざし」で紹介されました。
執筆は坪内稔典さんです。
『すみれそよぐ』が沖縄タイムス(2020.12.9)で紹介されました。
20代にしてテレビの俳句番組で司会を務めるなど幅広く活躍してきた俳人による第3句集。2012年から20年まで、結婚や妊娠、出産、育児を経験する中で詠んだ344句を収録する。
タイトルは、息子の出産直後に手術台の上で詠んだという〈すみれそよぐ生後0日目の寝息〉から。〈子が蟻を踏んできょとんと死ぬって何〉など、子を通して世界と出合い直す句が印象的。事物へのまなざしはどこか温かく、同時に日常を包み込む自然の雄大さを感じさせる。〈星空は無音の瀑布鯨飛ぶ〉(朔出版・2200円)
『すみれそよぐ』が毎日新聞(2020.12.25)「季語刻々」で紹介されました。
評者は坪内稔典さんです。
『すみれそよぐ』が、「ミセス」2021年2月号のブックレビュー「蜂飼耳さんの今月の本」で紹介されました。
1983年生まれの俳人、神野紗希の第3句集『すみれそよぐ』は、20代の終わりから30代半ばにかけて作られた344句を収録する。自然、四季、一人の女性として生きる日々、子どもの誕生。いきいきとした句、のびのびとした句が多く、読んでいると作者とともに呼吸している感じがしてくる。
摘む駆ける吹く寝転がる水温む
白鳥は漫画のふきだしのかたち
水菜切るビルひとつずつ目覚めゆく
西瓜切る少年兵のいない国
掌に包む蜜柑のような言葉欲し
鯛焼を割って私は君の母
レモンスカッシュ輝かせどの今も今
もっと引きたくなるが、このくらいにしよう。
575の音数からなる定型詩である俳句の伝統と、現代を生きる人としての斬新な視点が、柔らかさと力強さを見せながら融合する。水戸部功の装幀もよい。とてもすてきな句集だ。
『すみれそよぐ』が毎日新聞「詩歌の森へ」(2021.1.14)で紹介されました。
評者は酒井佐忠さんです。
いま俳句界で注目されている神野紗希の久しぶりの句集『すみれそよぐ』(朔出版)が出た。神野は高校時代、俳句甲子園をきっかけに俳句を始め、いまは現代俳句協会青年部長としても活躍。20代の最後から30代半ばまでの作品で、結婚、出産、育児などの経験から、他者と生きていくことや愛について深く考える時期の作品集だ。
すみれそよぐ生後0日目の寝息
眠れない子と月へ吹くしゃぼん玉
地球とは大き鳥かご雪が降る
生命の危機をも乗り越える出産だったというが、さわやかな言葉の中に、生命感あふれる句集となった。「時代を案じながら命を見つめる怒濤(どとう)の日々のただなか、俳句は今を生きる言葉だと、つくづく思う」と神野は記す。評論集『女の俳句』など批評でも活躍する俳人の一つの転機になる句集といえそうだ。