朔の本

久保田哲子句集『翠陰』(すいいん)

発行:2024年11月14日
帯文:堀切克洋
装丁:奥村靫正・星野絢香/TSTJ
四六判並製 192頁
定価:2860円(税込)
ISBN:978-4-908978-19-0 C0092


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前作『青韻』で「鮫島賞」「北海道新聞俳句賞」を受賞した著者の17年ぶりの第三句集。10代で俳句に出合い、西本一都の「足もて作る」、加藤楸邨の「真実感合」の理念のもと、ひたむきに詠み続けてきた思いがここに結実。本書には、北国に根を下ろして生きる人の、自然への誠実な眼差しがある。

◆帯文より

還らざる手紙のやうに冬鷗

一枚の便箋のような冬鷗が翔び立つ。それは、遠き日にすでに失われてしまった、読み返したいと切に願っても叶わぬ手紙だ。古りゆくものに囲まれる生活のなかで、作者の追想する過去は、降り積もりはじめる初雪のように新しい。(堀切克洋


◆自選 12句

白亜紀の海泳ぎきし春の夢
流氷の行方をおもひ青き踏む
船虫の全身眼なり走るなり
一舟のやうに家あり蕎麦の花
秋風を牛の重量移りゆく
あれほどの雲雀放ちし枯野かな
冬木立詩人の柩あるごとし
昆虫学者の家は青葉の中にあり
素潜りの足のひらりと雲の峰
寒満月われも一樹として立てり
本売りし日のしづけさよ薄氷
駅員の燈を消しゆけば雪をんな


◆「あとがき」より

北海道の大自然に生まれ育ち、「明るく強く美しく」を目指した句づくりを心がけてきましたが、どれほど作品に反映できたのだろうか、そんな自問を今も繰り返しています。しかしながら、ここ数年続く体調不良のなかで、第三句集を上梓できましたことは、幸せであり、有難いことと思っています。(久保田哲子


<著者略歴>

久保田哲子(くぼた てつこ)
1948 年、北海道愛別町生まれ。
句集に『白鳥来』(1993 年刊)、『青韻』(2007 年刊)。
2008 年、句集『青韻』にて第28 回鮫島賞、第23 回北海道新
聞俳句賞受賞。
現在、「百鳥」同人。俳人協会会員、同北海道支部理事、北海道俳句協会会員。

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