朔の本

水田巴詩集『深海魚』(しんかいぎょ)

発行:2024年8月1日
跋文:仁平 勝
装丁:奥村靫正・星野絢香/TSTJ
装画:片塩広子
A5判変型 上製セミハード装 268頁
定価:2200円(税込)
ISBN:978-4-911090-12-1 C0092


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十代の頃から書き溜めてきた
心の揺らぎ、ことばの種。
今、言葉の花束にして
そっと此処に置こう。
チェリスト水田巴の初詩集、110篇。

◆跋文より

一巻の終わり近くに「花束」という詩がある。

春の昼の花に胸をときめかせながら
花束を作った
逢うことのない あのひとに向けて
あのひとは
なぜ 摘むのかと いぶかしがる
「庭で咲かせておけばよいのに・・・・」
(中略)
今日も花束をつくる
誰かに伝えねばいられないから

「あのひと」は、「あなた」とは違う。それは、ほかでもない読者のことだ。あるがままの言葉では伝わらないから、そのつど言葉を摘み取って束ねてみる。水田さんにとって、詩を書くとはそういうことだった。そして、彼女が詩を書き続けてきた理由は、「誰かに伝えねばいられないから」ということに尽きる。読者は、「庭で咲かせておけばよいのに」などといぶかしがらず、その「花束」をぜひ受け取ってもらいたい。(仁平 勝


◆収録作品より

「チェロはね 中身が空洞だから
きれいに響くんだよ」

ならば
私も きれいに響けるだろうか (「チェロ」)

*  *  *

憎しみは水を濁らせ
哀しみがそれを澄ます

さあ 私よ
私は あの
古い棲処にもどるのだ
深い海の底へ

そして 待つのだ
涙が枯れたのちの
ふたたび 水面に映るはずの
あの 美しい月を (「深海魚Ⅱ」)


◆あとがきより

詩を書き始めたのはいつからだったろうか。
ものごころ付いた時から詩は身近にあった。
父(水田喜一朗)は現代詩人の端くれで、学士入学で入った早稲田大学仏文科の窪田般彌研究室でフランス現代詩、とりわけルネ・シャールを研究していた人だった。母とも詩を通して知り合ったそうだ。(中略)改めて私に音楽と言葉という二つの表現手段を与えてくれた二人に感謝をしている。この二つは私の人生を通して今も昔も大切な軸といえる。生きるための杖とも言えるかもしれない。(水田 巴


<著者略歴>

水田 巴(みずた ともえ)
1959 年東京生まれ。
6 歳でチェロを始め齊藤秀雄、天野武子、小野崎純各氏に師事。
14 歳の頃音楽から離れ、大学卒業後はIT の世界へ。49 歳でチェロ再開、仙台フィルソロ首席(執筆時点)の三宅進氏、元N 響次席銅銀久弥氏に師事しつつ、アマチュアチェリストとしてソロや室内楽での演奏活動を続ける。
一方でWeb サイト「詩と言葉」を開設し、自作の詩や随筆、影響を受けた詩人の作品などの紹介を続けている。
http://chobi256.blog108.fc2.com/

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