朔の本
なつはづき句集『人魚のころ』(にんぎょのころ)
発行:2025年6月22日
帯文:高野ムツオ
栞:筑紫磐井
装丁:奥村靫正・星野絢香/TSTJ
装画:Yoko Yoshioka
四六判ソフトカバー 160頁
定価:2640円(税込)
ISBN:978-4-911090-32-9 C0092
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第一句集『ぴったりの箱』から五年。研ぎ澄まされた作者のことばは、読む者の「内なる記憶」に触れて、心の余白をそっと広げてくれる。特有の身体感覚は健在、その表現は一層しなやかに、ますます自在に羽ばたく。鮮烈かつ繊細な280 句を収めた注目の俳人・なつはづき待望の第二句集!
◆帯より
蛇いちご母をまっすぐ見られぬ日
「蛇苺」はその妖しげな名と鮮烈な赤の印象から、禁断の異界を想像させる季語として使われることが多い。しかし掲句の蛇苺は、心の奥底を反映してくれる無垢できれいな深紅の実だ。季語「蛇苺」が生まれ変わった瞬間である。なつはづきの自在な発想力のたまもの。
(高野ムツオ)
◆自選12句
ドッジボールずどんとバレンタインの日
鉄屑になるまで鉄でいる穀雨
八十八夜少し透けたくなる体
臨月の腹万緑に押し返す
かぶと虫かさりと父の戻る夜
髪洗う人魚の頃を思い出す
蛇いちご母をまっすぐ見られぬ日
思い出を常温にして桃を剝く
絶叫のような吸い殻幸彦忌
シングルマザー銃のようなる葱提げて
息ふたつ交わす真冬の爆心地
心から遠い指先あすは雪
◆あとがきより
この五年間は特に「上手い俳句よりも届く俳句が作りたいなあ」と思ってきた。「届く俳句」という定義は難しいのだが、「理論や理屈に基づく理解」ではなくて「感覚の想起」が生じる俳句だと自分で勝手に思っている。言語化するのは難しいのだけれど確かにそこにある感情や感覚。理解しようと言葉に置き換えなくてもいい。ただぼんやりとそれを感じていただけたら嬉しい。(なつはづき)
<著者略歴>
なつはづき
1968 年 静岡県生まれ
「青山俳句工場05」「豈」「俳句新空間」「天晴」に参加
2018 年 第36 回現代俳句新人賞受賞
2019 年 第5 回攝津幸彦記念賞準賞受賞
2020 年 第一句集『ぴったりの箱』刊
2022 年 第7 回攝津幸彦記念賞正賞受賞
現代俳句協会理事
GHOC 現代俳句オープンカレッジ講師
超結社「朱夏句会」代表