朔の本

土見敬志郎句集『岬の木』

小熊座叢書117篇
発行:2023年12月25日
序文:高野ムツオ
装丁:奥村靫正・星野絢香/TSTJ
四六判ソフトカバー 188頁
定価:2420円(税込)
ISBN:978-4-911090-03-9 C0092


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故郷の寒風沢島(宮城県)の海岸に立っていた大きな一本のカヤの木は、東日本大震災で生家とともに流された。苦難と向き合い続け、12年の時を経て、「何かを書き残さなければ」との思いから生まれた一冊。「小熊座」創刊同人による第二句集。

◆帯より

白南風やわれ一本の岬の木

土見敬志郎の俳句は、森羅万象の命のありかを見定めようとする執念の結晶である。氏の抒情豊かな詩性はここまで至った。(高野ムツオ


◆高野ムツオ選 10句

雷鳴をたどれば山椒魚の国
悲しみの陽炎であり沖つ石
竹皮を脱ぐを金剛力といふ
海境の陽より大綿生まれたる
晩年や祭の底に揺れてゐる
三月や座棺のごとく干潟磐
緑雨なり死者も生者も眼を開く
父の忌の雷火の匂ふ松の幹
綿虫の指に触れんとして触れず
夜濯ぎの水が銀河と光り合ふ


◆あとがきより

地震発生時刻の午後二時四十六分。時の刻みはそこで停止し、私に深い内的外傷をもたらした。そして故郷喪失者の一人となって、米寿を迎えた今日までの長い間、胸の中に封印されたままであった。(中略)この深い暗鬱の精神状態から抜け出すのは容易な事ではなかった。私の胸の中にある懊悩と訣別するには何かを書き残さなければとの切実なる思いが潜在意識として芽生えたのはこの周辺からである。(土見敬志郎)  


<著者略歴>
土見敬志郎(つちみ けいしろう)
昭和10 年 宮城県塩竈市生まれ
昭和30 年 「駒草」入会(のち退会)
昭和42 年 一力五郎賞受賞
昭和60 年 「小熊座」創刊、入会
平成2 年 句集『父の景色』上梓
宮城県俳句大会河北賞、宮城県芸術祭文芸賞、小熊座賞、宮城県俳句協会賞等を受賞。
現代俳句協会会員、宮城県俳句協会幹事、宮城県芸術協会会員、
十符の里吟社代表

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