朔の本
松本章三句集『町の燕』(まちのつばめ)
発行:2024年10月17日
装丁:奥村靫正・星野絢香/TSTJ
四六判上製 336頁
私家版
ISBN:978-4-911090-16-9 C0092
昭和14年に松本翠影が創刊した俳誌「みどり」。その5代目主宰として終刊まで心豊かに務めた俳人・松本章三氏(1928-2021)の80年を記録した一冊。「来るやすぐ町の燕となりにけり」「走り根につまづき登る薄暑かな」。章三氏の俳句、文章の他、夫人の作品や吟行写真も多数掲載。
◆帯文より
来るやすぐ町の燕となりにけり
ふと目にとまった素早い小鳥の飛翔。あ、燕が来たな、と思う。親愛の情と敬意が心をよぎる。燕たちは早くも町を熟知して、巣作り子育てを始めている。浅草に近い下町育ちの作者には、雀と燕が常に身近な自然の生き物、良き隣人であった。(松本映子)
◆松本映子選 10句
この庭の常連にして初雀
小さき滝ちひさき春の音立つる
鮑桶一つに縋り母娘海女
碧く清く卯波も立てずエーゲ海
明易し浅間雲ともけぶりとも
水羊羹さらりと話す身内の死
煌めきて衰へ迅し大文字
くろぐろと富士峙てり星月夜
川底の石に影置き竹の春
新しく染めし暖簾や走り蕎麦
◆「あとがき」より
今、「みどり」誌の山(通巻九百三十号)を目の前に思うことは、ここ「みどり」に集った人々が、俳句という一つの目標に向かっていかに真剣に楽しんだかということです。毎月「みどり」誌に載る先輩句友の作品にどれだけ感銘を受け刺激を頂いたことか。(中略)どうか章三が言うように、これからも自然を身近に、心豊かに日々を送っていただきたいと思います。(松本映子)