朔の本

荒井千佐代句集『黒鍵』

発行:2023年6月1日
栞:井上弘美
装丁:奥村靫正/TSTJ
装画:石井茄帆香/TSTJ
四六判上製 204頁
定価:2750円(税込)
ISBN:978-4-908978-89-0 C0092


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殉教・被爆の地、長崎に生まれた著者は教会のオルガン奏者として弾き、歌い、祈りながら、心と言葉を研ぎ澄ませてきた。一集を貫く精神世界は深く、尊い。数々の受賞歴を持つ「沖」の実力作家による、13年ぶりの第四句集。

◆栞より

身の裡に断崖のあり雪しんしん
永遠でなきゆゑ励むヒヤシンス

千佐代さんは身に負ったものを引き受け、目を逸らすことなく、むしろその重圧に耐えることで己を律してきたのだろう。それは降りしきる雪の「断崖」として見えている。『黒鍵』には、「永遠でなきゆゑ励む」作者のたましの軌跡が綴られている。(井上弘美


◆自選12句

雛流す雛の髪をととのへて
爆死者の墓の幾万鶴引けり
螢を握りすぎたり死なせけり
主に罪を負はせて真夜の髪洗ふ
炎天を来て夭折の葬を弾く
臥す人に萩刈る音も障るなり
レコードに針を置く音冬銀河
鳩舎へと遅れて一羽クリスマス
除夜の潮さかのぼりをる被爆川
磔の主の腰布や春の雪
白鍵に黒鍵の影凍返る
永遠でなきゆゑ励むヒヤシンス


◆あとがきより

〝この聖堂で、このオルガンで詠もう″と心に誓って蓋を開け、譜面台に伴奏譜を立て、鍵盤に指を置いた瞬間、白鍵に黒鍵の影がくっきりと。長年同じ行為を繰り返していたのに、初めて目に留め、心を打たれ、〝俳句は授かりもの〟という言葉を改めて思いました。(荒井千佐代


<著者略歴>
荒井千佐代(あらい ちさよ)
昭和24年、長崎市生まれ。
平成3年、「沖」入会、能村登四郎に師事。
平成10年、第一句集『跳ね橋』上梓。
翌11年、『跳ね橋』により長崎県文学新人賞受賞。
平成12年、「系図」50句にて第三回朝日俳句新人賞受賞。
平成14年、第二句集『系図』上梓。
平成15年、「空」入会、同人となる。
平成21年、「沖」賞受賞。
平成22年、第三句集『祝婚歌』により第25回長崎県文学賞受賞。
現在、「沖」「空」同人。法人俳人協会幹事。
長崎県文学俳句部門選者、長崎新聞「きょうの一句」選者ほか。

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