朔の本
髙橋亜紀彦句集『異邦の神』
発行:2023年12月1日
帯文:橋本喜夫
栞文:五十嵐秀彦
装丁:奥村靫正・星野絢香/TSTJ
四六判上製 216頁
定価:2750円(税込)
ISBN:978-4-911090-01-5 C0092
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コロナ禍の中、最愛の妻を病で喪い、自己の無力さを痛感した著者が、妻を恋い、神に救いを求める日常を克明に描く。信仰を超えて、異彩を放つ第三句集。
◆帯より
妻一人守れず何の耶蘇冬至
他人の句集を読んで、泣いたのは初めてだ。宿痾に苦しみながら、自裁を考えた日々。やっと出逢えた人生の灯りである細君と信仰により明るい未来が開けたはずだった。逢ったことはないが亜紀彦は私の弟子だ。ある意味凄い句集だと思う。読んでみたら解る。(橋本喜夫)
◆自選12句
明日からは春の炬燵となる炬燵
その唇に触るることなく梅の花
YES・NO枕ありけり昭和の日
妻の魂さすらひ始む夜の秋
保護室にナースの運び来る聖菓
緊急事態宣言の夜の菜飯かな
だんだんと少女めく妻夕花野
パンに塗るレバーペースト開戦日
叛逆か従属か蟻迷走す
逝く秋や妻の瞼を指で閉づ
気の利かぬ亡妻だと屠蘇を手酌する
白シャツの何処にもゆかず汚れけり
◆栞より
彼の句にむずかしいところはない。むしろ平易な句が多い。それでもなお、その底にあるもの、読者に見つけてもらいたがっているものを捕まえるのは容易ではない。しかしそれを見つけてしまったとき、「コンビニで流行らぬものを買ふ夜涼」や「日高屋の湯麺啜るみどりの日」のごとき一見平凡を装いつつ虚無感のにじむ句に日常の闇の深さを盗み見る畏れを感じるのだった。(五十嵐秀彦)
<著者略歴>
髙橋亜紀彦(たかはし あきひこ)
1962年、東京生まれ。キリスト者の家に育つ。
2004年から俳句をはじめ、「いつき組」「里」[藍生」等を経て、現在「雪華」「紫」同人、「篠」会員。現代俳句協会会員。
句集に『闌春』『石の記憶』がある。