朔の本

『長谷川櫂 自選五〇〇句』

発行:2024年4月10日
長谷川櫂論:青木亮人
装丁:水戸部功
本文デザイン:星野絢香/TSTJ
四六判並製 240頁
定価:2420円(税込)
ISBN:978-4-911090-11-4 C0092


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数多くの句集や俳論、エッセイ集を発表し、俳句界をリードし続ける長谷川櫂氏による、待望の自選句集!第一句集『古志』から、最新句集『太陽の門』まで、全17冊の句集からその俳句のエッセンスを凝縮した一冊。句歴50年の「変遷」と「現在地」が見えてくる。

◆収録句より

春の水とは濡れてゐるみづのこと
冬深し柱の中の濤の音      
目を入るるとき痛からん雛の顔
春の月大阪のこと京のこと
夢今もラグビーポール青の中
父母に愛されしこと柏餅
幾万の雛わだつみを漂へる
いくたびも揺るる大地に田植かな
大空はきのふの虹を記憶せず
魂の銀となるまで冷し酒
次の世は二人でやらん鯛焼屋
生淡々死又淡々冬木立


◆著者エッセー「封印」より

『古志』の帯文に「これから、このうちのどの方向に眼差しをむけ、どのように深めていくのだろう。私は氏の行方から、目を離さないつもりである」と書いた飯田龍太は、その後の私の俳句にどんな印をつけるだろうか。知りたいと思うものの、それを知るのはまさに恐ろしいことである。(長谷川 櫂


◆長谷川櫂論「黒い獣と花」より

「毎日グラフ」(1989年)の頁を繰ると「精鋭18人」と題された若手俳人の紹介欄があり、冒頭の俳人に何気なく目を落とすと、次の文章が綴られていることに少なからず驚いた。

――小さいころから一頭の黒い獣を飼っている。初めて見たとき、まだ猫くらいの大きさだった。こわそうにしていると、その生きものは近づいてきて、「こわがらなくていい。私はおまえのものだ」と言った。それから、もっと時間がたって、私がおとなになると、その黒い獣は、たびたび私の前にあらわれて、私が大事に育てたものを、こわすようになった。私は怒り、泣いた。しかし、私の最良の句は、どれも、この獣のおかげでできたものであることも知っている。こんど現われたら、その黒い生きものに、こう言おう。「私はおまえのものだ」と。これには勇気がいる。――

著者は長谷川櫂氏で、<冬深し柱の中の濤の音><夏の闇鶴を抱へてゆくごとく>が掲げられている。両句から受ける印象と文章の感触は異なっており、しかも句と文が共鳴しあっていることに驚いたのだ。
青木亮人


<著者略歴>
長谷川 櫂(はせがわ かい)
1954年、熊本県生まれ。中学時代から俳句をはじめ、平井照敏、飴山實に学ぶ。
東京大学法学部卒業、読売新聞記者を経て俳句に専念。
1993年、「古志」を創刊主宰。2000年より朝日俳壇選者。
2004年から読売新聞に連載の詩歌コラム「四季」は今年20年を迎えた。
『俳句の宇宙』でサントリー学芸賞(1990)、句集『虚空』で読売文学賞(2003)受賞。
現在、ネット歳時記「きごさい」代表、東海大学文芸創作学科特任教授、
神奈川近代文学館副館長、「奥の細道文学賞」「ドナルド・キーン大賞」選考委員等を務める。

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