朔の本

中嶋鬼谷編著『井上伝蔵の俳句』

発行:2024年10月1日
序文:金子兜太(生前の手紙)
装画:倉林一雄「両神山 寒茜」
装丁:奥村靫正・星野絢香/TSTJ
新書版並製 174頁
定価:1100円(税込)
ISBN:978-4-911090-17-6 C0092


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日本近代史上最大の農民蜂起・秩父事件から140年。その指導者として中心的存在だった井上伝蔵は欠席裁判で死刑判決を受け、北海道へ逃亡。俳句というかすかな足跡を残しながら生き続けた。
秩父生まれの著者が、井上伝蔵とその俳句を丹念に辿った34 年の探究がここに完結する!

◆主な内容

序……金子兜太先生からのお便り
第一章 井上家の俳人たちとその作品
第二章 北海道時代(俳号・柳蛙)
終 章 伝蔵探索三十四年の旅の終りに
井上伝蔵年譜(兼 近代史略年表)


◆序より

明治四十四年に、伝蔵一家はさびれ果てた石狩町をあとにして札幌へ転居したことを記した文章を読んだとき、私に感動が訪れました。ドラマの高揚を味わったのです。この文章は研究(探求)であるとともに一篇のドラマでした。
それと、俳句でその人の生涯を語れることが素晴らしい。小生も一茶や山頭火でやっていますが、彼らは俳人ですから、これは当然です。遊俳伝蔵が俳句で語れることが素晴らしいわけです。(金子兜太


◆収録句より――井上伝蔵(柳蛙)の俳句

病む母と居るも楽しき年忘れ
照り返す夕日に暑し秋の蟬
思ひ出すこと皆悲し秋の暮
煤掃て我家も広う思ひけり
いつの間に小雨は晴れて朧月
友立ていとど淋しや雪のくれ
俤の眼にちらくつやたま祭
だしぬけに只一声や時鳥
山里や日毎に替る雪の道
明け空を見よとて鳴かん初がらす


<著者略歴>

中嶋鬼谷(なかじま きこく)
1939年生まれ。埼玉県秩父郡小鹿野町出身。
俳誌「寒雷」で加藤楸邨に俳句を学ぶ。
楸邨逝去後、「寒雷」退会。2 0 1 9 年、季刊俳句同人誌「禾」創刊。
現在、個人誌「鬼瓦版」を発行。
句集『雁坂』『無著』『茫々』『第四楽章』、評論『乾坤有情』、
評伝『加藤楸邨』『井上伝蔵―秩父事件と俳句』『井上伝蔵とその時代』
『峽に忍ぶ―秩父の女流俳人 馬場移公子』などがある。

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