朔の本
行方克巳句集『晩緑』
発行:2019年8月1日
装丁:奥村靫正/TSTJ
四六判上製本 160頁
3,300円(税込)
ISBN:978-4-908978-24-1 C0092
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人生の感慨を季題に託し、
軽やかに詠いあげた第八句集。
句集名の「晩緑」とは、「新緑」すなわち初夏の若葉の緑に
対して、終わりかけの緑を表す著者の造語。
70代半ばを迎えた著者が、自らの人生に重ねた言葉に
他ならない。
代表句「生涯のいま午後何時鰯雲」を超えたユーモアと
そこはかとない哀歓の漂う一冊。
「知音」代表・行方克巳の最新句集!
◆「あとがき」より
「慶大俳句」に参加して、清崎敏郎師や、楠本憲吉、杉本零氏等の知遇を得て、俳句にのめり込んでから、またたく間に半世紀以上の歳月が過ぎ去った。
昭和、平成そして令和を迎えた今も、「季題発想」という私の作句信条は変わることはない。
また、俳句は「何を詠まなければならないのか」ではなく、「何をどう詠めばいいのか」であるという私の気持も変わらない。
この度の句集名は「新緑」に対しての「晩緑」という心である。
もし、私の作品が人の心に届きにくいとしたら、それは私の表現力が至らぬためである。心して表現力を磨くことに励みたいと思う。
◆自選12句
遠くより呼ばれて昼寝覚めにけり
致死量に足らざる鬱や秋かはき
狡猾な眼をして鮫のひるがへる
無味無臭而して無策冴返る
泥抽いて泥の光の蘆の角
茅花流し母のことその母のこと
万華鏡の中の秋風見てゐたる
柿一つ買ひ今生の秋一つ
鰭酒に舌焼き虚実皮膜論
都鳥水の火宅もありぬべし
北風やお日さまといふよきことば
立ち枯るる男たるべし荒野(あらの)打つ
<著者略歴>
行方克巳(なめかた かつみ)
1944年、千葉県生まれ。
慶大俳句会で清崎敏郎に師事。以来「若葉」に投句し、富安風生、清崎敏郎に学ぶ。
1987 年、句集『知音』で俳人協会新人賞受賞。
1996 年、西村和子と俳誌「知音」を創刊、共同代表を務める。
句集に『阿修羅』『地球ひとつぶ』他、著書に『世界みちくさ紀行』等がある。