朔の本
青木桐花句集『あるがまま』
発行:2024年6月20日
序文:行方克巳
帯文:西村和子
装丁:奥村靫正・星野絢香/TSTJ
装画:青木良助
四六判上製セミハード装 256頁
定価:2640円(税込)
ISBN:978-4-911090-08-4 C0092
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「琅玕」の岸田稚魚、「欅」の大井戸辿の二師を喪い、夫も見送り、俳句をやめようとした時に出会ったのが西村和子句集『鎮魂』だった。その後「知音」で一から俳句を学び直し、日常、旅、自然、人間を詠み続けてきた。卒寿を過ぎいよいよ深まる句境、渾身の第一句集。
◆帯文より
風鈴の清音散らす市の端
鬼灯市か草市か、端っこに風鈴の店が音をふり撒いている。「清音」と聴覚で描写することで涼しさが体感にも伝わってくる。老いていよいよ五感が研ぎ澄まされ、省略の技を極めた作者の、春秋の哀歓が籠められた作品集。(西村和子)
◆序文より
病、老い、そして死は誰も免れることのできない宿命である。年齢を加えるとともに誰でも苦しむのは様々な病気である。桐花さんも何度も病気や怪我に苦しめられてきた。しかし、そういう不幸すらまた俳句によって昇華されるという事実も桐花さんは学んできた。
磔の如き仰臥や蟬しぐれ
歩行器に足を掬はれ四月馬鹿
麻酔より覚めて主治医の眼の涼し
磔のような仰臥を強いられている入院生活がある一方、自らの歩行器に躓いて危うく転倒しそうになる自分を笑うゆとりが感じられる。俳句が明らかに桐花さんの心の支えになっていることが分るのは、俳句の仲間の一人として大変嬉しい。(行方克巳)
◆自選12句
丹後路や簾越しなる機の音
余生とは残されしこと昼の虫
畳屋の乾かぬ砥石十二月
門火焚く手元見られてゐるやうな
鞆の浦沖より晴れて鱵干す
鉦の緒の小躍りしたり鉾囃子
火祭りの火に煽らるる小競り合い
喉仏汗の光れる切場かな
薄氷に昨夜の風筋有りにけり
歩行器に足を掬はれ四月馬鹿
遠き日の夫とこの冬夕焼かな
散りがたのなごりを風のいとざくら
<著者略歴>
青木桐花(あおきとうか)
昭和7 年11 月 茨城県古河市に生れる
昭和58 年 「琅玕」入会、岸田稚魚主宰に師事
平成元年 「欅」入会、大井戸辿主宰に師事
平成25年 「知音」入会、行方克巳、西村和子両代表に師事
平成30 年 「知音」同人