朔の本
『あの時』書評・記事
『あの時』が秋田魁新報(2021年3月5日)にて紹介されました。
『あの時 俳句が生まれる瞬間』が河北新報(2021年4月11日)の「とうほく 本の散歩道」で紹介されました。評者は文芸評論家の小林直之さんです。
『あの時 俳句が生まれる瞬間』が仙台発・大人の情報誌「りらく」5月号(2021.4.28発売)で紹介されました。評者は詩人の水月りのさんです。
『あの時 俳句が生まれる瞬間』が角川「俳句」6月号(2021.5.25発売)の書評欄で紹介されました。
評者は歌人の梶原さい子さん、表題は「新しい『あの時』」です。
本書は、高野ムツオ氏が東日本大震災以後に詠んだ俳句100句を自解し、仙台の写真家・佐々木隆二氏の写真とコラボレーションしたもので、東日本大震災を言葉と写真で記録した一冊。
梶原さい子さんは、「それを読み進めることで私たちは、俳句が生まれた一〇〇の「あの時」に改めて居合わせる。そして、分かったつもりだった句の、新たな読みの可能性を知るのだ。」と述べ、高野氏の代表句ともいえる蘆の句について読みを深める。
泥かぶるたびに角組み光る蘆
描写が明瞭で、クローズアップされた景がありありと浮かぶ句である。だが、実際に光っていたのは、「川辺に下りて確かめるとさざなみであった」という。しかし、大切なのは、この時、蘆の芽ぐみを幻視した、求めた、心の方であろう。再生の象徴としての蘆の芽。幻だとしても、いや、それゆえにこそ、この上なく美しくまぶしい。
非常時にあって、さざなみにさえ希望を見出そうとする心、それは再生への祈りでもあったという。そして、この一書について次のように締め括られている。
「句と写真の結びつきは、〈震災〉の即物的な記録という側面も持つ。十年が経ったというのに、ページを繰れば容易に震災直後に引き戻される。が、そこは、以前とは少し異なる場所だ。句が生まれた瞬間を知り、「あの時」は、新しい「あの時」になった。
10年間、被災地にとどまり、短歌を発信し続けてきた梶原さんならではの名文が心に沁みました。梶原さい子様、ありがとうございました。