朔の本

佐藤圭子句集『桃の花』

発行:2020年4月1日
装丁:吉田 瞳
四六判ソフトカバー 174頁
非売品

控えめでありながら、筋の通った芯の強さを見せる句風は、師の阿部みどり女、蓬田紀枝子譲りのもの。丁寧に暮らす日常から詩を掬いあげた「駒草」同人の第二句集。

◆「駒草」2020年8月号より

 一枚の田水の暮れぬ桃の花  圭子

掲出句は平成23年3月11日に発生した東日本大震災から二ヶ月程経った頃、傷心を抱いて仙台郊外の田園地帯を逍遥した圭子さんが、出会った桃の花の明るさに希望を見い出し授かった句で、『駒草』の四季の窓で「無欲のよさに、品格が備わっている」と西山主宰より高く評価された、正に写生の眼と作者のこころが一致した瞬間に生まれた客観写生の極意の一句である。(小林里子)


◆作品12句抄

母の部屋母の居るかに雛の灯
子の墓の野菊の丈に跔みけり
一つ咲き二つ待たるる福寿草
残菊のかがやく夕べ子の忌日
母の忌の南部風鈴小さく鳴る
夫の背の夕日まみれや実梅もぐ  
秋簾巻きて二人の夕餉かな
やはらかく葱を抜きたる春の雪
瑞巌寺杉伐られたる寒さかな
春隣こつと卵の黄身ふたつ
震災の遺構の校舎つばめの子  
みどり女の句碑に潮の香五月来る


<著者略歴>
佐藤圭子 (さとう けいこ)
昭和16年、岩手県水沢市(現、奥州市)生まれ。
平成元年、「駒草」入門。以後、八木澤高原、蓬田紀枝子、西山睦各主宰に師事。
平成14年、宮城県俳句協会会員。
平成20年、第一句集「一本桜」上梓。
現在、「駒草」 同人、俳人協会会員。

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