朔の本

『文事』書評・記事

句集『文事』が西日本新聞(2021.10.29)で紹介されました。
評者は谷口慎也さんです。

第4句集。「読み書きの文事一切がますます好きになった」とある。著者は熊本大地震、石牟礼道子の死、そしてコロナ禍、等々を内面化しようと努めてきた人。私はこの一文を著者の最も基本的な「文事」、すなわち文芸的な「身ほとり」の再確認だと受け取った。〈地震越えてこその桜と思ひけり〉〈ででむしの角ふるはせて生きんとす〉〈相聞のごとくに天地初茜〉〈瓦礫みな祈る形に炎天下〉〈丁寧に生きて冬帽膝の上〉〈観音の臍うつくしくしぐれけり〉―岩岡俳句は一貫した「祈りの文学」である。それが天や神なるものへの「存問」として屹立しているが、そこを貫いているものは徹底したヒューマニズムの精神である。すなわちそれは、人のことをわが身の事として感知し、理解しようとする「態度」(生き方)の問題なのだ。

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