朔の本

高野ムツオ著
『あの時 俳句が生まれる瞬間』
写真=佐々木隆二

発行:2021年3月11日
造本:真田幸治
A5判並製 104頁 1870円(税込)
ISBN:978-4-908978-60-9 C0095


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東日本大震災から10年。
今、語り継ぐいのちの俳句。

あの時、なぜ俳句だったのか。
東北の地に根ざし、自然本来の姿を通して人間の生き方を見つめる高野ムツオの世界。
2019年以降、好評を博した俳句と写真のコラボレーション「語り継ぐいのちの俳句」展の作品を含むビジュアル決定版!

◆帯文より

東日本大震災から十年。
その時生まれた、たった十七音の俳句が写真によって幾重にも無限に広がります。人間の想像する力、生きる力に触れていただければうれしい限りです。(高野ムツオ


◆20句抄

四肢へ地震(ない)ただ轟轟(ごうごう)と轟轟と
車にも仰臥(ぎょうが)という死春の月
泥かぶるたびに角組み光る蘆
みちのくの今年の桜すべて供花
瓦礫より出て青空の蠅となる
草の実の一粒として陸奥(むつ)にあり
冬波の五体投地のきりもなし
人間を見ている原子炉春の闇
靴を鳴らして魂帰れ春野道
揺れてこそ此の世の大地去年今年(こぞことし)
死者二万餅は焼かれて脹れ出す
花見弁当大震災の記事の上
揚花火生者のために開きけり
ただ凍る生が奇蹟と呼ばれし地
みちのくの闇の千年福寿草
児童七十四名の息か気嵐は
地震の話いつしか桃が咲く話
緑夜あり棄牛と知らぬ牛の眼に
吹雪くねとポストの底の葉書たち
狼の声全村避難民の声


<著者略歴>
高野ムツオ(たかの むつお)
1947(昭和22)年、宮城県生まれ、多賀城市在住。
阿部みどり女、金子兜太、佐藤鬼房に師事。読売文学賞(詩歌俳句賞)、蛇笏賞、小野市詩歌文学賞、河北文化賞等を受賞。
句集に『陽炎の家』『鳥柱』『雲雀の血』『蟲の王』『萬の翅』『片翅』、著書に『時代を生きた名句』『語り継ぐいのちの俳句』『鑑賞 季語の時空』等がある。
現在、俳誌「小熊座」主宰、日本現代詩歌文学館館長。河北俳壇・熊日俳壇選者。

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